Field
建設分野で学ぶこと
基本の三力
建設分野について学ぶ分野を伝統的には土木工学と呼びます。英語ではCivil Engineeringといい、訳せば「市民の工学」という言葉になります。街をつくることだけでなく、街を運営していくこと、街を守っていくこと、街を直していくことなど、街に関わる全てのことが土木工学に含まれていると言ってもいいかもしれません。
その中で、構造力学、土質力学、水理学という三つの基本の力学科目を併せて三力(さんりき)と呼ぶことがあります。土木工学の中で最も基本的で外すことのできない科目のことです。
構造力学分野
橋をかける。ビルを建てる。高速道路をつくる。全ての構造物をつくるには、その重量や風の力、車や人の荷重など、「力」を知る必要があります。また、日本は地震国です。地盤が大きく揺れる可能性を無視するわけにいきません。こうしたすべての力を考えて、安全で快適で、なおかつ長い間使える土木構造物をこれからもつくっていかなければなりません。
こうした構造物をつくっていくための「力」について学び、構造物を設計するための計算を行えるようにするのが構造力学分野という分野です。構造力学分野は土木工学だけでなく、建築の分野においても共通した部分が多い分野です。
土質力学分野
大地に立つ。たった五文字の言葉ですが、力強い言葉です。どんな構造物でも地面の上に建っています。また、都市においては地下の開発も盛んです。大都市圏では元々あった地下鉄のさらに深いところに新しい地下鉄を通したりして、大深度地下の開発が行われています。
こうした地面のこと、専門用語では地盤と言いますが、地盤について学ぶための科目を土質力学と言います。地盤は細かく見ていけば石ころの集まりであったり、砂や粘土、土の集合です。こうした細かな粒が集まってあの巨大なビルや橋を支えていると言ったら、にわかには信じがたいですが、その「なぜ支えられるのか?」という疑問を解決するための科目が土質力学なのです。土木工学の基本中の基本と言ってもいいでしょう。
水理学分野
どこの街にも川があります。川は雨の水を海へ流すと同時に多くの生き物を育み、我々に憩いの場を与えます。日本は地震だけでなく、台風も数多く来襲します。梅雨の長雨やゲリラ豪雨もあって、世界でも雨がたくさん降る国の一つです。
水理学ではこうした「水」に関わる力学を学びます。我々の飲み水を確保するにはダムが必要ですが、ものすごい圧力に耐える構造物をつくらなければなりません。上水道や下水道、海の波と港、津波、高潮など、便利な水と災いの水の両方について知らなければ、水を使いこなす人にはなれません。
都市・交通計画分野
三力の基礎分野の他にも建設分野で学ぶ大事な分野があります。その一つが都市・交通計画学分野です。
都市には必ず交通が必要です。バス、電車などの公共交通だけでなく、道路には多くの自家用車やトラックが走ります。どこにどのくらいの道路を通せばいいか、いっそのこと車道をやめて路面電車にしてはどうか。人とモノの流れを将来にわたって的確に予想して、快適な街をつくる。それが計画学という分野です。
災害に強い街にするのは当然ですが、訪れたくなる街、住んでみたくなる街、そんな素敵な街を提案することがこの分野の仕事になります。
環境工学分野
きれいな水ときれいな空気。誰もが当たり前に必要なものです。でも、都市において、きれいな水はつくらなければ手に入りません。安全でおいしい水をつくる。きれいな空気を守る。ゴミをリサイクル処理する。こうした技術を担っているのが環境工学の分野です。関西では多くの人が琵琶湖の水を飲んでいますが、上流の人が使った水は淀川に捨てられます。下流の人はまたそれを飲んで淀川に捨てる。繰り返し、繰り返し、淀川の水は実に5回も飲んで捨てているんです。それでも大阪の水は美味しくなったと言われています。日本の浄水技術は世界一の技術なんです。
建設材料分野
おいしい料理をつくるには新鮮な材料が必要です。ビルを建てるにはセメントが、橋を架けるには鉄が必要です。何をつくるにも材料がなくては話になりません。建設材料分野はこうした土木構造物をつくるための材料について学ぶ分野です。
コンクリートの中身を知ってますか?セメントの他に石や砂が入っています。料理にレシピがあるように、コンクリートも用途に応じてレシピがあります。砂や石の大きさ、セメントとの量の配合、必要な強度を出すにはどうすればいいか。世界最強のコンクリートづくりに挑戦するというのもおもしろいかもしれません。
やってみたい分野を見つける
土木工学という分野は、街をつくる(ものづくり)、街を守る(防災)、暮らしを快適にする(環境)を三本の柱として、安全と安心をつくっていく分野です。都市に関わるあらゆることが研究フィールドですので、あなたがやってみたい分野を見つけて是非挑戦してほしいと思います。