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日本政府さん公共交通支援額をうっかり2桁間違えてしまう

第二次補正予算の公共交通支援の内訳の情報によると,先日の分析通り,メインの支援は政策金融公庫や持続化給付金,雇用調整助成金他で借りるなりしてくれということのようで,やはり例のクーポン券の束のようなのが支援メニューのようである.

それよりも驚いたのが,3枚目の右上の金額である.

「140億円程度」

えっ?! 2桁金額間違えてませんか?

クーポン券の項目だとそんなもんになるのかもしれないが,通勤通学需要の減退,出張需要の消滅,インバウンドの消滅,書き入れ時期の観光需要の消滅で,公共交通事業はかなり痛手を受けてるはず.(そして,当面それは続く.)

140億円? ご冗談でしょう.自動車社会の米国ですら2.7兆円ですよ.

1枚目の「基本的な考え方」のところにちゃんと書いてるじゃぁないですか.

    1. 緊急事態宣言下も含め,感染拡大防止策を講じながらサービス提供が継続されることが必要.
    2. 需要減に伴う減収から財務面での事業存立基盤が揺らいでいる事業者について,事態収束後にサービスの提供が困難となる事態を回避することが必要.
    3. 事態収束後は,十分な感染拡大防止策を講じつつ,ビジネスモデル面も含めた円滑な移行に向け準備することが必要.

140億円でこれが実現できる? ご冗談でしょう.

一般的な商売なら,借金してでも良好な事業をすれば事業の成長があって,借りた金以上のもうけが出るかもしれないが,日常生活を支える交通事業の場合は,事業が軌道に乗ってもせいぜいトントンレベルで,借金返せるほど儲かるわけじゃないんですよ.

世の中の交通事業者が巨大鉄道事業者ばかりじゃないですからねぇ.日本政府さん.

#なお,物販や不動産業で企業グループ全体を支えている交通事業者も多いと思うが,物販→Eコマース,オフィス需要→テレワーク…により,今後もじりじりと収益源を失い続ける可能性アリ.

 

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その11-まとめ)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

まとめておこう…と言ったきり数日経ってしまったが,まぁ,例のテレ授業,皆さんが思っているより準備に手間がかかる.お金持ち大学なら「無観客授業」をするだけで,事務職員がビデオ収録して,後はよしなにしてくれるらしいが,そういう境遇ではないので,毎日毎日,授業内容のオンラインコンテンツ化作業である.何だかんだで1コマに1-2日かかるので,平日はほとんど潰れてゆく…

さて,「JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?」のまとめである.キーポイントはJRではなくて,地下鉄中央線だ.船もヘリコプターも,客数をさばく点では全く当てにならないだろう.場所が場所だけに,徒歩も無理だ.

(1) 地下鉄中央線は今のままで何もしない場合…

 バスを数百台かき集めてピストン輸送.途中の渋滞は心配だが,そこよりもバスターミナルに平均6-7秒ごとに到着するバスをちぎっては投げ,ちぎっては投げ,という作業が必要.①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,これらが成否を握る.失敗すると客がバス停や地下鉄駅にあふれ,悪評待ったなし.

(2) JRが桜島まで新大阪や環状線各駅からの輸送に参戦した場合…

 JRの客は,結局のところ桜島から会場まではバス客に変身するので,やはりバスだ.JRで輸送する距離の分,バスの走行距離は減るので,バスをかき集める場合の必要台数は減るかもしれない.だが,キーはバスだ.
(1)と同じく,①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,これらが成否を握る.桜島-会場間のバスは連節バスを導入して単位輸送力を上げるという方法もあるが,結局はこれもバスだ.

(3) パークアンドライド駐車場を整備した場合…

 駐車場まできた客は,やはりそこから会場まではバス客に変身するので,やはりキーはバスだ.駐車場を変なところに整備すると,昔の「USJ渋滞」の再来になるぞ.(1)(2)と同じく,①バスをかき集められるか,②超高性能バスターミナルを整備できるか,だ.

(4) 地下鉄中央線を2分30秒運転にした場合…

 ちょっとバスへの依存は下がるが,まだバスは7-8秒ごとにやってくる.(1)(2)(3)と基本的には同じだ.

(5) 地下鉄中央線を2分30秒運転 & 増結8両化 & 180%まで詰め込み

 ここまでできれば,バスが会場のバスターミナルに到着するのは17秒毎で,何とか現実的なバスターミナルの能力で済みそうだ.基本的な輸送能力は「JR+バス」と「地下鉄中央線」でほぼ賄えるので,バス輸送はP&R駐車場輸送や遠方からの観光バスなどに割り当てても大丈夫そうだ.
増結には近鉄けいはんな線のホーム延伸は必要そうだが,準備工事が終わってそうなので,大規模な土木工事は不要そうだ.増結についても,高齢車両の入れ替えに合わせれば思ったほど費用はかからないかもしれない.あとは電力供給用の変電所の増強か.

結論.
① JRの参戦はバスの輸送距離の短縮には役立ちそうだが,救世主にはなりそうもない.
② 地下鉄に対してちゃんとインフラ投資をすれば,観客輸送問題はほぼ解消しそう.
③ インフラ投資をケチると観客輸送で苦労し,失敗すると悪評が立ちそう.


JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その10)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

車両の話の続きである.メトロの車両の話.

現状6両×18編成,万博中8両×32編成,万博後6両×21編成で考えてみる.

現状では,1984−1989年製造の旧20系が7編成,1991-1995年製造の24系が11編成である.前者が2025年で36年,後者が30年なので,この際,万博後には全部新しくなるように考えてみる.

形式 製造 編成
旧20 1984-1989 7 Tc M T M M Tc
24 1991-1995 11 Tc M T M M Tc

 

万博時には,旧20系を3編成戦線離脱させ,ここから中間車両2両×4編成分を抜き出して8両編成化に使う.同じく,24系を4編成戦線離脱させ,ここから中間車両2両×7編成分を抜き出して8両編成化に使う.まっさらな8両編成のM25系(ということにしておく)を21編成製造して実戦配備して万博輸送.

形式 製造 編成
旧20 1984-1989 4 Tc M T M T M M Tc
24 1991-1995 7 Tc M T M T M M Tc
M25 2025 21 Tc M T M T M M Tc

 

万博後は,古い20系も24系もご引退いただき,新造車のみに.中間車両2両を抜いて6両にする.

形式 製造 編成
M25 2025 21 Tc M T M M Tc

旧20系や24系は大阪メトロの他路線にもたくさんあるので,万博終了後に余ったM25系中間車両2両×21に中間車両や先頭車両をさらに新造して新たな編成を作り出し,古い旧20系や24系は「さようなら」.

じゃぁ,まとめてみよう.(つづく

 

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その9)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

増結の話の続き,車両の話である.(もはやJRの話は一言も出てこない.)

現在の地下鉄中央線はピーク時3分15秒間隔運転らしいが,これを実現するために,大阪メトロの6両編成が7+11=18編成,近鉄の6両編成が4+9=13編成,計31編成186両使われている模様.

これを2分30秒毎にすると単純計算で1.3倍の編成数が必要になるが,路線長も約3.2km増加するので,平均30km/hとして往復12.8分,つまり約5編成余分に必要になる.

31×1.3+5=45.4≒46編成(368両)

製造しなければならない車両数は,既存の電車は最大限活用するとして,ざっくり計算して368-186=182両.ほぼ倍増やね.

万博終了後は路線長が近鉄部分を含めて約10%長くなっており,必要な編成数が35編成ということにしておく.近鉄とメトロの車両の比率は各社線内の走行距離に合わせておいた方が後々面倒が少ない.生駒駅折り返しと登美ヶ丘まで行く列車が半々くらいなので,走行距離の比としては近鉄内:メトロ内の比は概ね4:6くらいか.

ということで,万博後の35編成は近鉄:メトロ=14編成:21編成と考えてみる.

万博中の46編成の比がアンバランスになるのは仕方がないので,あまり細かいことは考えないが,万博輸送なので,一時的な編成増はなるべくメトロ側の車両でまかなうことにする.

 

さて,まずは近鉄の車両.1984−1989年製造の7000系列が9編成,マイナーチェンジ版の2004-2005年製造の7020系が4編成である.2025年には前者は36年モノになっているので,この際,更新を考えてみる.えっ,近鉄にしては早期更新だって…んん,まぁ,そうかも.

形式 製造 編成
7000 1984-1989 9 Tc M T M M Tc
7020 2004-2005 4 Tc M T M M Tc

 

これを万博時にはこうしてみる.古い7000系を3編成戦線離脱させ,運転席の無い中間車両を12両捻出.これを別の同型式の編成に組み込んで8両化.モーターの有無の違いはあるが,細かいことを気にしなければそのまま組み込めるかも.

これとは別に,新しい8両編成(仮にK2025系としてみる)を4編成製造して戦線投入.同時に7020系に中間車両2両×4編成を製造して増結して投入.この中間車両2両は万博が終わったらK2025に組み直しできることを前提に設計しておくことにする.

形式 製造 編成
7000 1984-1989 6 Tc M T M T M M Tc
7020 2004-2005 4 Tc M T M T M M Tc
K2025 2025 4 Tc M T M T M M Tc

 

万博が終わったら,7000系6編成は”お疲れ様でした”.7020系4編成は増結した2両を外すとともに,K2025系4編成も2両を外して6両に.中間車両16両が余剰になるので,一部は電動機を取り付けて,足りない車両を新造して計6編成調達して終了.

形式 製造 編成
7020 2004-2005 4 Tc M T M M Tc
K2025 2025 4 Tc M T M M Tc
K2025 2025 4 Tc M T M M Tc
K2025 2025 2 Tc M T T>M M Tc

話が長くなってきたので,メトロ編は続きで.

# なお,7000系≒7020系なので,この際K2025系≒7020系で設計してしまい,万博後の不足する車両をK2025として新造する代わりに,7000系の車両をなるべく使い回せば当面の支出を抑えられるかも.
#K2025系(≒7000系≒7020系)は1編成だけ新造し,あとは追加の中間車両ばかり新造して8両化.万博後は7000系のうち程度の悪い中間車を廃棄して6両に戻し,当面運転することで,支出削減.

# この手の話,好きそうな人多そう.

 

日本政府さん未必の故意でバス会社を破綻させてしまう

何もしないよね.タクシー会社に続いて,バス会社が破綻しはじめてるというのに.

いや,もちろん「何かやってます」アピールしてるのは知ってるけど.

こういうサイトがあるけれど,「事業者の取り組み」「自治体の取り組み」はあっても,”政府の取り組み” は無い模様.

政府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用事例集」なるものを見ると,いろいろやってますアピールはあるものの…

No.12 公共的空間安全・安心確保事業
 検温設備導入しても客増えない.その検温誰がするの?

No.23 密集軽減のための輸送力増強事業
→ スクールバスにしか使えない.そもそも休校が多くてスクールバス動いてない.

No.24 公共交通応援事業
→ 三密を避けるためにしか使えない.そもそも利用が減っていて客が少ない.
→ 収束後のサポートにしか使えない.そもそも利用が減っていて客が少ない.

No.25 地域公共交通機関の高度化支援事業
→ 収束後の設備投資にしか使えない.そもそも設備投資どころの状況では無い.
しかも,経費の一部だけしか支援せず,設備投資の中核資金にはならない.

No.29 駅乗客数などの解析、可視化事業
→ 人の行動を可視化して外出行動の変容をしてほしいのは行政側であって,公共交通の支援策のふりをしているが支援策では無い.

No.38 必需物品供給事業
→ 公共交通の支援メニューとしてあげられているが,中身は自治体の支援メニュー.

No.47 学校給食関連事業者等への応援事業
→ 「スクールバス」の文字が登場するが,なぜスクールバスが食育なのかがわからない.

No.48 金利、保証料などの金融面での支援事業
→ 「
日本政策金融公庫等の他の支援施策の対象とならない又は超える部分について、利子補給や保証料の助成など金融面での支援」なので,この制度で主体的に公共交通を救う気は無い模様.

No.68 寄付等の応援に応える地域づくり促進事業
→ 要するに「ふるさと納税」だろ.

No.69 地域の魅力磨き上げ事業
No.71 観光/シティプロモーション活動事業

→ 観光PRの支援メニューのようだが,日常の公共交通を支えるものではない.

ちゅうことで,「公共交通ではない一般の営利会社と同じ支援策を使ってね.もちろん,まずは銀行から金借りるなりのことはしてね.」ということを間接的に表現したアピールでしかない.

この政府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の活用事例集」なるもの,よく観光地などで配られている(ほとんど使い道がない)割引クーポンの束に見えてしょうがないんだが.この交付金は総額1兆円規模らしいが,全部公共交通に突っ込んでも自動車社会の米国の半分にもならない(全部突っ込めないけど).

このままだと,まだまだバス会社や鉄道会社が破綻してゆくぞ.

 

#未必の故意などではない,と言う反論があるかもしれないが,もしそうなら,現況把握すらできていないということかも.「~地域公共交通の確保維持への積極的な活用に向け、情報交換を始めます~」などと今頃いっている時点でToooooooooooooo Late

#やっとマスクきた.でも,もう間に合ってます.

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その8)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

増結の話の続きである.(もはやJRの話ではなくなっているが…)

8両編成2.5分間隔,180%詰め込みを実現するには,車両の調達と8両編成が停車できるホームが必要である.

ホームについては,地下鉄中央線のホームは元々8両編成対応で建設されているようで,端っこの方は使われていないだけの模様.柵を取り外して,信号設備の調節をして,などの整備をすれば万博駅-長田駅間はとりあえず使えそう.

その先は近鉄けいはんな線になっており,ホームが6両までにしか対応してなさそう.youtubeにuploadされている”前面展望ビデオ“を見ると,荒本〜生駒の各駅はすでに8両対応のホームが準備されており,柵で仕切っているだけのようなので,中央線のホームと同様にすれば対応できそう.

その先が問題で,白庭台駅,北生駒駅,登美ヶ丘駅,いずれも6両分しかホームがなさそう.

だが,よく見ると,地下駅の白庭台は都心側がホーム延伸に対応しているようでありトンネルのサイズがホーム部分と同じ構造のように見える.北生駒駅も郊外側にホーム延伸が可能なように基本的な土工が済んでおり,登美ヶ丘駅も都心側にホーム延伸ができるような準備工事が済んでいそうである.ということで,比較的簡易な工事でいずれも40m弱くらいのホーム延伸は可能そうに見える.

(白庭台駅の都心側…これは自前の写真

近鉄側にはホーム延伸工事をする理由が無いので,おそらく揉めるのは,そのホーム延伸工事の費用を誰が出すか,というあたりになるだろうか.けいはんな線のホーム延伸工事をせずに,車両側でドアの〆切操作をするという方法もありそう.

車両の話が残っている…つづく

 

 

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その7)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

増便の話に続いて,増結の話である.

現在のところ,大阪の地下鉄中央線は6両編成で定員820人である.これを8両編成にすると,中間車両が増えるので,820+140×2=1100人まで増える.輸送能力が34% upだ.

これを2.5分間隔で運転すると…

1100人/本×(60分÷2.5分/本)×150%=3.96万人/時

バスの本数も再計算してみると…

バスに要求されるピーク時処理能力: 6.3万人/時 −3.96万人 −0.06万人=2.28万人/時
バスの本数: 2.28万人/時÷70人/台=326台/時
バスの間隔: 3600÷326=11.0秒/台
バスのバース数: 2.5分/台÷11.0秒/台=13.6

これでもかなりの台数だが,だいぶ先が見えてきた.

詰め込み具合を150%にしているが,首都圏通勤電車の整備目標レベルの180%にしてみると,

地下鉄の処理能力: 1100人/本×(60分÷2.5分/本)×180%=4.75万人/時
バスに要求されるピーク時処理能力: 6.3万人/時 −4.75万人 −0.06万人=1.49万人/時
バスの本数: 1.49万人/時÷70人/台=213台/時
バスの間隔: 3600÷213=16.9秒/台
バスのバース数: 2.5分/台÷16.9秒/台=8.9

かなり現実的になってきた.このレベルなら,すでにどこかの市街地のピーク時に実在しそう.

じゃぁ,是非とも8両編成2.5分間隔,180%詰め込みで…ということになるんだが,解決しなければならない点がいくつかある.(つづく)

#JR桜島駅からのシャトルバスが206本/時と計算したので,地下鉄中央線が本気を出せば,客数の観点ではバスはJR桜島駅からのシャトルバスだけでほぼ十分ということかな.地下鉄恐るべし.

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その6)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

地下鉄の話に戻る.続きである.

JRが直通電車を走らせようと,P&R駐車場を作ろうと,最後はバス頼みになる.海上の埋め立て地なので,ちょっと離れてる駅から徒歩,という作戦も使えない.平均6.7秒おきに(つまり,続々と)切れ目無くバスがやってくる状態になりそうで,道路の負荷も心配だが,ターミナル施設の処理能力の方がもっと心配である.

バスの負荷を減らすには,もとの話に立ち戻って,地下鉄の能力upを考えるのが正攻法だろう.

このサイトでの試算のセッティングは次のようにしていた.

地下鉄中央線の輸送力が鍵になりそうだが,車両が今のままなら定員820人(6両),路線自体はATC化されており御堂筋線などと同じ仕様のようなので,頑張れば3分未満の間隔でもいけそうだが,折り返し能力の問題もあるので,3分間隔としてみる.詰め込み具合は,行楽客を199%詰め込むというのは非現実的なので,京阪神圏の路線整備の目安の150%に設定してみる.

820人/本×(60分÷3分/本)×150%=2.46万人/時

これを,増便・増結することを考えてみよう.

まずは,増便.1970年の大阪万博の際には,地下鉄御堂筋線が延伸されて2分30秒間隔で運転されたようである.終点の万国博中央口駅は引上げ線2線付きの2面1線(8両編成対応)で電車が処理されたようだ.

さて,2025大阪万博の夢洲の地下鉄終点駅はどのような配置になるのかは定かでは無いが,1km程度の直線は確保できそうなので,引上げ線2線付きの2面1線駅の整備は不可能では無さそうである.ということで,地下鉄中央線の終点駅はかつての万国博中央口駅と同様のものの整備はできそうである.

次に2分30秒の件であるが,御堂筋線のATCの導入は1970年の万博輸送に合わせて導入されたもののようで,逆に言えば2分30秒運転にはATCは必須ということでもあろう(単なるATSで2分間隔運転していた国鉄阪和線というのもあったが…).中央線にもATCが同時期の1970年の万博輸送に合わせて導入されているので,基本的なインフラは御堂筋線と同じようである.

ということで,”変電所の容量が確保できれば” 少なくとも2分30秒運転はできそうである.では,少し計算を修正してみよう.

820人/本×(60分÷2.5分/本)×150%=2.95万人/時

輸送能力が20% upした.バスの本数も再計算してみると…

バスに要求されるピーク時処理能力: 6.3万人/時 −2.95万人 −0.06万人=3.29万人/時
バスの本数: 3.29万人/時÷70人/台=470台/時
バスの間隔: 3600÷470=7.7秒/台
バスのバース数: 2.5分/台÷6.7秒/台=19.5

ちょっとだけ改善した.つづいて,増結だ…つづく

 

 

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その5)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

6.7秒問題以外の大事な話の続きである.

バスはどこからやってくるかというと,1つは桜島駅からのシャトルバス(本当に桜島駅がいいかどうかは要検討,USJ駅の方がいい可能性もあり).

そのほかのバスの始発地としてはパークアンドライド駐車場.
この記事によると,駐車場は「計5カ所あるが、大阪市内は舞洲1カ所のみ。そのほかは阪神高速湾岸線近くの堺市や兵庫県尼崎市のほか、同県伊丹市の公共施設の土地などが候補に」とある.

会場直近の駐車場(もしかして舞洲?)は完全予約制にしないと,そこを目がけて続々と自家用車が集まってくることになり,周辺の道路は大混乱必至である.(完全予約制でも,自家用車は朝の開場時間に合わせて続々とやってくるので,会場周辺道路の渋滞の原因になる可能性アリ)

そのほかのP&R駐車場からシャトルバスというのは,まぁ概ね妥当だが,その後に書いてある担当者のお話…「可能な限り会場近くでパークアンドライド用の駐車場を設けたい。今後、土地の確保に向けて、調整・交渉に動いていきたい」

ん?
そのフリンジパーキングへやってくる
自家用車の引き起こす渋滞のことは考えてる?

会場近くにP&R駐車場を設けるということは,会場近くまで自家用車が集まってくるということなので,その自動車は朝夕に都心を突っ切ったり,会場近くのP&R駐車場周辺をうろうろしたりすることになる.

大阪(および周辺)の人はもう忘れただろうか.かつてUSJが開業したての頃,まだ自家用車利用の扱いにUSJも行政も慣れていなかった頃,阪神高速淀川左岸線も無かった頃,阪神高速には「USJ渋滞」があり,休日には湾岸に近づいてはいけないと言われていたことを.

大丈夫?

万博輸送の話は,まだつづく.地下鉄の話に戻ろう.(つづく)

#USJの駐車場とも連携しておかないと,万博目的でUSJの駐車場に車を入れようとする輩が続出する可能性あり.

JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その4)

情報源: 大阪・関西万博 会場もよりの桜島-新大阪間に直通列車検討 JR西日本 – 毎日新聞

ところが,新大阪から直通電車で桜島駅に着いた客の旅はまだ終わらない.桜島駅から万博会場までは道路の最短ルートで約5km.港湾地区のトラックの路駐を避けるなら約6km,渋滞がなければ10-15分,渋滞が発生すれば(経産省の試算では夢舞大橋の混雑度は1を越えるので,ピーク時には渋滞する可能性大)小一時間かかる.

その区間をシャトル「バス」で輸送するようだ.そう,バスである.つまり,桜島まで電車で来ても,その客は最終的には「バス」客に変身するのである.

毎時7200人運ばれてくるとして,70人乗りのバスだと,約103台のバスが必要である.

忘れてたが,桜島駅には環状線から直通してくる電車が15分ヘッド(7200人/時),西九条-桜島間の区間便も15分ヘッド(7200人/時)で運転されている.合計14400人/時.

港湾地区への通勤輸送やUSJへの客の輸送用だ.USJ客と万博客は同じ時間帯の客の可能性が高いが,万博客のピークと通勤客のピークは何とかずらせると信じて,合計14400人/時の半分を万博輸送に振り向けられたとする.

そうすると,桜島-万博間のバス輸送能力は7200+7200=14400人/時必要だ.都市交通の教科書ならLRTか通常の鉄道を敷きましょうというレベルの客数だ.70人乗りのバスで約206台.結局バス客になる.

バス206台=14400人分だけ地下鉄中央線が空くかというと,まぁそんなわけにはならない.

新大阪-(地下鉄経由)-万博会場だと,概ね40分ほど(数分ごと).

新大阪-(直通電車)-桜島-(バス)-万博会場だと,直通電車が8+7=15分くらい?,10分乗換,バス15分として,概ね40分ほど(15分ごと).
確実に早く着けるわけではなさそう.

結局のところ,JRの直通電車は,バス便の走行距離短縮に役立つということになりそう.都心などを横切ってくるバスを少なくして都心の渋滞を軽減したり,バスや運転士の総拘束時間を減少させるることには役立ちそうだが,地下鉄の混雑問題を解消する,というレベルではなさそう.

つまり,万博会場での6.7秒おきにバスが到着するという状況は改善されるわけではなさそう.どうする?

万博輸送のかなりの部分を最終的にバスが担うという点では,実は6.7秒問題以外にも大事な話があるんだが…(つづく