売れ行きの悪い商品があるとする.
通常なら値段を下げるか,品質を上げるかの対応をするところ.
ところが,売れ行きが悪いと値段を上げたり,量を減らしたりする商品があるそうな.
当然さらに売れ行きが悪くなる.
あたり前田のクラッカー
#とある会議で「おめぇら値上げするか,減便するかしかしないじゃないか」とタクシー会社に罵られているバス会社を見たことあり.
この1000人という基準は国鉄再建法廃止基準の4分の1だが、隣接駅間の一方向で1時間あたりの最大旅客輸送人員が500人/日以上になる場合や基幹的な路線と判断される場合は対象から除外するとしている。
情報源: 輸送密度1000人/日の線区、協議開始から3年以内に決着を…国交省のローカル線検討会が提言 | レスポンス(Response.jp)
すでに各所で話題になっているこの件.輸送密度1000人で廃止…って,まぁ,JRじゃ無理だわな.
こんな感じかな.なお,輸送密度1000人で営業を続けている民間鉄道は珍しくない.
ところで,気になったのはこの部分.「隣接駅間の一方向で1時間あたりの最大旅客輸送人員が500人/日以上になる場合」は廃線対象外という条件 (*「人/日」は誤記だと思う).
逆に言えば,片方向ピーク時450人/時とかなら廃線の対象になりうるということ.仮に450人/時をバス輸送しようとすると,60人/台としてピーク時に片道7〜8本/時のバス便が必要ということ.
鉄道線を廃線にしようかというような地域で片道7〜8本/時のバス便を運行できるバス会社あるのか? もしあったとして,朝のピーク輸送終わった後のバス(と運転手)はどうする?
現在,バスは「運転手のなり手がいない」という理由で減便されているような交通機関だぞぉ? 見通し甘くないか?(*)
(*)かつて有田鉄道では,大半の便をバス転換した上で,ピーク時だけ列車を動かしていた模様.結局廃線になっちゃったけどね.
それから,鉄道の廃線が議論されるような地域だと,バスに詰め込みされて輸送されること自体を良しとしない生活習慣の可能性もある.通学時に子供が「バスはギチギチで疲れる.受験に影響する」と言い出せば,容易に自家用車の送迎に切り替わると思っていいだろう.京福電鉄の「負の社会実験」ではそういう話があったと思う.
リンク先の記事には書かれていないが,確か恒常的に50人程度しか乗っていないならバス輸送が適当などという見解も出ているようだが,バスに50人乗せれば半分弱くらいが立ち客になるわけで,昭和の大都市部じゃあるまいし,昨今の地方部じゃぁ着席できない公共交通機関はあっという間に見放されると思うぞ.
「詰め込まれて座れない」と悪評が立って,こちらもすぐに自家用車での送迎に転換しそう.何でもかんでも大都市基準を持ち込むと大失敗.
実際、他の鉄道では輸送密度2千人未満でも黒字であったり、赤字でも距離当たりで少額にとどまっていたりする。運行本数は比較的多く、サービス水準を上げて乗客数が伸びたケースもままある。鉄道の可能性を引き出すための運行改善や経営の工夫が、今後の協議で求められる。
情報源: ローカル線の行方 運行の新たな仕組み必要:山陽新聞デジタル|さんデジ
研究者や数字に詳しい市民団体などからはずっと前から指摘されていた件.
コロナを機に「輸送密度2000人未満で廃止したいなぁ」という空気を匂わせ始めているが,地方の民営鉄道では「輸送密度2000人」もあれば十分に(…とは言えないかもしれないが,なんとか)経営している路線もかなり多い.いや,その半分でも…
にもかかわらず,「”JNR”から”N”が取れただけの鉄道会社」ではなぜか経営できないという.
人件費の水準が高かったり,線路保守の基準が妙にハイレベルだったりというあたりがコスト高の原因.
意思決定が大都市の本社であり,当該路線では何の決定もできなかったりするのも原因.
「親方日の丸」ではないが,「親方一部上場」意識が抜けなかったのも原因.
大都市での物販等の副業に味をしめて,人口減少下での本業の工夫をしなかったのも原因.
「JNR」末期には,運賃値上げと大編成列車の少便運転しかせずに利用者にそっぽを向かれたことは既に忘却の彼方.コロナが原因とはいえ,また運賃値上げと減便を始めてデススパイラルを回り始めた模様.(なお,JNR末期の場合は大編成のガラガラ列車だったが,今回はギュウギュウ詰めの積み残し発生もあるようなので,”N”があった時代のほうが旅客にとってはマシかも.)
件の記事の元データは,いずれ(近々?)詳細がどこかに出るのではないかと思うが,誰が見ても「努力不足」と感じる数字が並んでいると思う.
なお「”JNR”から”N”が取れただけの鉄道会社」以外にも「親方一部上場」意識が抜けない交通事業者グループもある模様.
交通事業者に対する国の「支援」メニューは多岐にわたるので,なかなか全体がわからないなぁと思っていたら,一覧があった(バス用).
予想通りというかなんというか,金額の大きいものは借金,返さなくてもいいお金の話は細かいのが多い.
やはりコロナ禍後には,借金苦にあえぐ交通事業者多発か?
当初は半年もあれば収束するかと思いきや,1年を過ぎ,未だ収束するどころか発散中.ワクチン接種はそれなりには進んではいるものの,大都市部での接種の段取りが悪く,1年前に色々とカッコいいことを言っていた自治体ほど遅そう.
中には接種会場の予約枠が空いているのに「高齢者の接種が終わっていないから」という謎の悪平等を理由に接種券すら配布しようとしない自治体もある模様.
さて,コロナで苦しんでいる交通事業者に対する国の対応が欧米と違うという指摘はこのサイトでも度々したが,当の交通事業者がその対応に何故か妙な満足をしているという謎.ヤバいぞ.
営業範囲が狭い事業者については,例えば日本政策金融公庫を通じて融資をしているようで,「返済期間が長い」「赤字なら超低利」「黒字でも低利」「自己資本とみなせる」「倒産した場合は返済不要」など,確かに借金としては美味しい借金ではある.
だが,妙な満足感に浸っている経営者が忘れているのは「返済する必要がある」ということである.「自己資本とみなせる」ので,バランスシート上の見かけの問題は回避できているかもしれないが,その借金は設備投資に回されているわけではないので,借金をしたからといって自家用車などの他の交通モードに対する競争力が強化されたわけではない.生命維持の点滴を打たれているだけである.
「返済期間が長い」「赤字なら超低利」「黒字でも低利」とはいえ,少なくとも元本+α程度は返す必要があるので,コロナ禍後に客が戻ったとしても更新されたわけでもない古い設備を使って余分な経費を長期に渡って払い続けなければならない…つまり経営上不利な状況に陥るわけだ.
客の立場としても,サービスが向上しているわけでもないのに割高な運賃を払い続けさせられることになるわけで,客離れはさらに進行する.バス等の会社の経営者はそれをわかってないんだろうと思う.真綿で首を絞められる状態が待っている.
最終的には「倒産した場合は返済不要」を切り札にして,企業グループが交通事業から撤退ということも考えているのかもしれないが,もしもそうなら計画倒産だ.もちろん,地域交通事業を完全に止めるわけにはいかないので,尻拭いは地元自治体だ.
国としては少なくとも元本は返ってくる仕組みだから交通事業者に対する債権(交通以外の他の事業も同じ扱いだが)になり,「国のバランスシート」も守られる,などと財務省は考えていると思うが,コロナ禍後には成長を伴わない悪い物価高と,それに伴う経済の悪化が待っているかも.
財務省は状況を見誤っていると思う.
#なお,地場の交通事業者は低利融資があるだけマシで,広域的な交通事業者はほったらかしらしい.
かなり久々の更新である.
11月以降何をしていたかというと,ひたすら授業内容のオンラインコンテンツ化である.表面的には「ハイブリッド授業でオンラインと対面の授業どちらも対応します」であるが,実態はオンライン対応しないと授業にならないので,授業準備は全く楽にならない.
オンライン授業の準備は対面授業の準備の数倍から十倍は時間がかかる.単に内容をパワポにすればそれでOKというわけでもない.対面授業用のパワポそのままではどうも理解度がかなり違うようである.
そんで実際に授業をすると,オンライン中継しているのでなかなか学生は出てこない.結局実質的にオンライン授業継続である.
世間的には,「大学の先生なんて,そのまま授業をオンラインで中継すればいいんでしょ」的な見方をしていると思うが,実態はカツカツである.ここ半年以上研究の「ケ」の字もない日々が続いてきた.
さて,今回の話題はこれである.情報の出所が1箇所しかないので,本当かどうかはよくわからないが,これが正しいとして検討してみよう.
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大阪・関西万博の来場者を円滑に運ぶため、大阪メトロが中央線で、会期中の運行本数を最大5割増やす方向で調整
情報源: 大阪メトロ中央線、運行本数5割増で調整 万博の期間中:朝日新聞デジタル
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毎時24本運転という方針であるが,増結の話は書いていないので,設備投資は最小限で済ませる方針のようである.6両の場合の編成定員は820人だったので,こうなる.
820人/本×24本/時=19,680人/時(定員)
一日最大28.5万人の観客想定になったようなので,ピーク時は6万人/時程度の輸送能力が求められるということか.記事には全体の4割を地下鉄が分担するということが書かれているが,これは一日を通じての値ということだろうと思う.
ピーク時首都圏通勤電車並みの定員の180%詰め込みとして,19,680×1.8=35,424人/時(180%乗車).これは6万人/時の…35,424÷6万=59.0%になる.つまり,残りの4割は「バス」だ.
記事には「来場者の2割をシャトルバスで、4割を自家用車や団体バスで輸送する方針で、船の発着場も整備」とあるが,船は数をさばけるわけではないので,ピーク時には戦力外状態である.自家用車やシャトルバスについても一部を除き直接会場に乗り入れられるわけではないので,最終的にはバス客として会場にやってくる.
つまり,6万人/時-35,424人/時=24,576人/時が会場にやってくるバスのキャパだ.
仮に70人乗りとして,24,576人/時÷70人/台=351本/時がやってくるわけで,約10秒に1台の割合だ.降車に2-3分かかるとして,バス降車場は単純計算で少なくとも15台分要ることになる(ちなみにバスタ新宿は乗車用12台,降車用4台).
…ということで,勝敗はバス輸送が握る計画が続く模様.
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JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その1)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その2)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その3)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その4)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その5)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その6)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その7)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その8)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その9)
JR新大阪-桜島間直通列車は大阪万博の救世主か?(その10)
衣笠キャンパス(同市)の映像学部・研究科と、びわこ・くさつキャンパス(BKC、滋賀県草津市)の情報理工学部・研究科の2学部2研究科を、令和6年4月に大阪いばらきキャンパス(OIC、大阪府茨木市)に移転
情報源: 立命館大2学部、4年後に大阪に移転 – 産経ニュース
新しい分野を統合して移転ということで,一見めでたい記事なんだが,BKCについてみると規模の縮小になっている.
BKCは南草津駅からバスアクセスだが,輸送能力がかねてから問題になっており,積み残しなどが発生していた.LRTの建設構想があったが実現せず,代わりに連節バスが導入されたものの,利便性の大きな改善はなかったということか?
以前から懸念はしていたが,要するに逃げられたわけで,アクセス性に劣る関西学研都市における同志社大学と同じ構造かな.
バス協会 “貸し切りバスの収入9割減続く” 国に支援策求める
情報源: バス協会 “貸し切りバスの収入9割減続く” 国に支援策求める | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
リンク切れ起こしやすいサイトなので,その節はご容赦を.
貸切バスの減収がひどいので,支援してくれと国に要望したお話.路線バスもかなり減少していて,看過できない状況なんだけどね.
じゃあ鉄道はというと,やっぱり客数は減っているはずなのに,バスほどの動きはない模様.
どこの会社かは言えないけれど…かなり乗客が減っていて経営苦しいらしいが,支援を求めてしまうと悪評が立って株価に影響し,今後の資金調達コストが上がってしまうのではないかと危惧しているらしい.なので,「苦しい〜」とは表だって言い出せないらしい.
客数減っているのは誰でも知っていると思うので,個々の事業者が言い出せないのなら団体(この場合は民鉄協か?)が代表で「苦しい〜」と言った方が良いのではないかと思う.
このままでは突然死する事業者が出てくるかも.