初夢鉄道2017(自動化編)

夢を見た.

20xx年,交通機関の自動化はかなり進んでいた.2010年代半ば以降注目された自動車の自動運転技術は,技術自体は完成するのは早かったものの,関連する法体系整備に時間がかかり,完全自動運転であるレベル4の自家用車への導入には思いの外時間がかかった.

その間,すでにATOという自動運転技術が導入されていた鉄道分野へは比較的早期に導入された.地下鉄を含む都市圏の通勤輸送では自動車の自動運転技術を応用した「新型ATO」の導入が行われており,ホーム柵の導入が終わった区間では「新型ATO」が稼働している.ただし完全に無人運転かというとそうでも無く,非常時の習熟目的という名目で運転席には乗務員が座っている.ドアの開け閉めの監視をするだけなので,実は運転士ではなく車掌相当の仕事しかしていない.もちろん,ドアの開け閉めそのものは「新型ATO」の機能の一部なので,本当に監視しているだけである.

地方部の鉄道でも閑散区向けの「新型ATO」が導入されている.こちらも乗務員がいるが乗務員の主な仕事は検札である.といっても大半はドア入り口のカードリーダー(というか,わざわざかざさなくてもカバンの底に入れたカードのチップを自動的に読み取ってくれる)で運賃収受は済んでいるので,本当の仕事はこちらも乗客の「監視」だけであり,客からはアテンダントと呼ばれている.

リニア新幹線は開業当初より自動化されているが,既存の新幹線にも「新型ATO」が導入されている.とはいっても東海道新幹線開業時点から自動ブレーキ装置であるATCが導入されており,2000年代半ば以降には定速運転装置も装備され始めたため,新幹線用「新型ATO」はドアの取り扱い機能と,従来からある近郊鉄道用のATO(2015年現在で既につくばエクスプレスで導入されているようなもの)の加速機能を追加しただけのようなものであった.(新幹線の運転士の目視力とそれに基づく判断は,初期の新幹線の段階で既に必然性を失っていた)

バスももちろん自動化されている.最初に導入されたバス路線は,ローカル鉄道線の廃止転換路線であり,専用道路を走行するものであった.例のごとく国土交通省が「自動運転の新型BRT」と称して宣伝したため,結構バス転換の話に乗る地方路線は多かった.実態としてはやはりバスであり,単に運転手がいないだけであったため,高速運転されるわけではなく,運賃が安価になるわけでもなく,サービスの改善自体はほとんど無く,後述する「新型自家用車」に対抗できるような交通機関にはなり得ていない.

さて,自家用車の自動運転については法体系の整備によって普及が進んだが,同時にレンタカー会社,タクシー会社,バス会社などが共同事業として始めた無人運転タクシーが普及し,一部の金持ちのステータスをひけらかす目的の自動車以外は自動車を自家保有する必然性が低くなり,自動車保有率が下がってきている.ただし,そのまま「新型自家用車」や「無人運転タクシー」で目的地まで行ってしまう人が多いので,自動車保有率の低下が即公共交通の利用向上に繋がっているのかというと怪しい.新事業会社は無人運転タクシーをパーソナル公共交通と呼べと言っているが,公共交通って一体何なんだという,公共交通の定義についての議論が始まっている.

その他の産業面でも自動化が大幅に進み,雇用の問題が大きな問題になっている.自動化ロボットの導入が安いか,移民の導入の方が安いかといった議論を産業界でしているようだが,果たして人間社会はどうあるべきかという議論は置き去りにされている.20xx年の若者の多くがどういった仕事を通じて社会参加すべきかという深刻な悩みを抱え込むようになり,新たな社会不安を増大させている.

…というところで目が覚めた.