世界恐慌後の米国ニューディール政策を振り返る

日本ではまだ感染拡大するかどうかに気をとられている段階だが,米国の失業率が30%と大恐慌のレベルを上回り,GDP成長率が年率換算で半減しかねない状況なので,その波は日本にもやってくる可能性は高い.

緊急対策は当然必要になるが,1920年代後半以降の世界恐慌時には回復までに数年から10年を要しているレベルであり(そしてそのまま第二次世界大戦へ),生半可な経済対策では日本経済が瀕死状態に陥るかもしれない.

日本の経済界はまだそこまで考えが及んでいないと思うが,考え得る影響としては…

世界的に経済的な余裕が無くなり,海外旅行などに行っている状況では無くなる.
→ インバウンド需要の消滅と観光産業の低迷および失業の増加.

効率的な世界的分業体制は一部の機能不全により全体の生産活動停止を招きかねないという認識が拡がる.
→ a. 分業体制に組み込まれている国内産業の低迷と失業の増加.
→ b. 時間的遅れを伴っての生産活動の国内への回帰.

世界的な消費需要の低迷.
→ 輸出産業への大打撃と失業の増加.

国内での失業増などに伴う経済低迷.
→ 国内各種産業への打撃と,さらなる失業の増加.

…あたりか?

さて,1930年代の米国では恐慌への対応としてどういう政策を実施したんだろうか.米国大使館の情報サイトによると,実施政策としては…

第一次ニューディール
工業・農業に対する信用供与
軍隊が実施する環境保護プロジェクトでの若者の雇用(植林,河川汚染除去,自然生物の保護区の作成,エネルギーや鉱床の保護など)
ダムの建設,発電した電力による産業振興,下水工事,架橋工事,空母の建造
学校教師や地方公務員の給与の肩代わり支払(地方自治体支援)
多数の小規模な公共事業プロジェクトの実行
農業の減産補助金(農産品価格の維持)

第二次ニューディール
全米各地での小規模プロジェクト実施(建物,道路,空港,学校などを建設)
連邦劇場プロジェクト,連邦芸術プロジェクト,連邦著作家プロジェクト(俳優,画家,音楽家,著作家を雇用)
若者に対する職業訓練プログラムの創設
社会福祉給付制度の創設
富裕層への課税強化

…とやってきたところで第二次世界大戦に突入.

二段階のニューディール政策に共通するのは「経済指標の回復」ではなくて「国民の雇用を回復させ,全国民に資金を回すこと」であった.

ところで,東洋の某国はまだ ”ニューディール” の議論にまで頭が回っていないようだが,米国の1930年代における対応をそのまま真似るべきとは言わないが,令和の大恐慌への対応は早期に「国民の雇用を回復させ,全国民に資金を回すこと」は真似るべきだと思う.

…え? まだ失業率は上昇してないってか? そのスタンスが「Too Little, Too Late」の原因だと思うんだが.

※日本のマスコミでは米国のコロナ対策大型公共事業の件について,「大統領選の選挙対策だぁ〜」と騒いでいるが,①今回のパンデミックが世界恐慌レベルの危機だという認識がマスコミに無い,②90年前の世界恐慌の際には公共事業で雇用を生み出して経済回復させたことをマスコミが知らない(あるいは意図的に無視),だと思う.レベル低し.